長田神社〜兵庫県神戸市長田区

2023/04/21

事代主 神戸 神功皇后 神社仏閣 長田神社 日本の歴史 武内宿禰 兵庫県











田(ながた)神社



【所在地】


兵庫県神戸市長田区




【御祭神】


事代主神(ことしろぬしのかみ)




【事代主神の別名と意味】


[別名]

於天事代(あめにことしろ)於虚事代(そらにことしろ)玉籤入彦(たまくしいりひこ)厳之事代主神(いつのことしろぬしのかみ)


[意味]

およそ天地の間、天上界と地上界、また宇宙間すべての物事をご覧になり、あらゆる物事を知り、守り、教え、諭し、導いてくださる神。



事代主神と関連するブログ記事⇩

『美保神社〜島根県松江市美保関町』

https://keipandkeip.blogspot.com/2021/07/blog-post_35.html


































【由緒と歴史】


201年2月、神功皇后(じんぐうこうごう)の三韓征伐〔新羅遠征〕からの帰途、船が動かなくなった。

*務古水門(むこのすいもん)で神占いを行うと、事代主神が現れ、次のような神託があった。

『吾(あ)を御心(みこころ)長田の国に祀れ』

その後、豪族・山背根子(やましろのねこ)の娘・長媛(ながひめ)に事代主神を祀らせ、航海安全を祈った。

船は動き出し、海を渡ることができた。


*務古水門:兵庫県尼崎市の武庫川の河口。




【山背根子】


山背根子は、天孫一族の*天津彦根命(あまつひこね)の子孫。

京都南部〔山背・山城〕を拠点とする豪族。

*摂津国の山氏の祖。

2人の娘がおり、姉は葉山媛(はやまひめ)、妹は長媛(ながひめ)。


*天津彦根命に関する天孫一族、【天照大神と素戔嗚尊の誓約】についてはこちら⇩

『新田神社〜鹿児島市薩摩川内市』

https://keipandkeip.blogspot.com/2022/08/blog-post.html


*摂津国:現在の大阪府北中部と兵庫県南東部。






【神占いで現れた4人の神】


上記の神占いの内容を少し詳しく説明すると、務古水門での神占いで現れた神は、事代主神だけではない。

日本書紀には次のように記されている。


三韓征伐から帰途した神功皇后は、*筑紫の国で皇子〔*応神(おうじん)天皇〕を生んだ。

*麛坂皇子(かごさかのみこ)と忍熊皇子(おしくまのみこ)は、幼い皇子〔応神天皇〕が皇位に就くことを恐れ、謀反を企て、明石海峡付近で待ち構えていた。

それを知った神功皇后は、*喪船を作り、「生まれた子は亡くなった」と噂を流した。

船は大阪から大和に入る航路を避け、ひとまず*紀伊水門に上陸した。

神功皇后は、臣下の*武内宿禰(たけのうちのすくね)に皇子〔応神天皇〕を託した。

再び乗船した神功皇后は、*紀淡海峡へ迂回して難波へ進もうとしたが、船が海中でくるくると回り、動かなくなってしまった。

務古水門へ戻って神占いをすると、天照大神、稚日女尊(わかひるめのみこと)、事代主神、住吉三神が現れ、次のような神託があった。


天照大神
「我の*荒魂を皇居の近くに置くな。*廣田国(ひろたのくに)へ置き、山背根子の娘である葉山媛に祀らせよ」

稚日女尊
「我は*活田長狭国(いくたのながおのくに)に鎮りたい。海上五十狭茅(うながみのいさち)に祀らせよ」

事代主神
「我は長田国に祀られたい。葉山媛の妹の長媛に祀らせよ」

住吉三神
「我の*和魂(にぎみたま)を*大津渟中倉之長峡(おおつのぬなくらのながさ)に祀れ」


神の教えの通りにしたところ、船は動き出し、平和に海を渡ることができた。



*筑紫の国:福岡県の東部を除いた地域。応神天皇が誕生した地は福岡県宇美町。


*応神天皇:第15代天皇。第14代・仲哀(ちゅうあい)天皇と神功皇后の子。


*麛坂・忍熊皇子:応神天皇の異母兄。仲哀天皇と大中姫(おおなかつひめ)の子。麛坂皇子は兄、忍熊皇子は弟。


*喪船:棺を乗せる船。


*紀伊水門:紀伊港。和歌山県の紀ノ川の河口。


*武内宿禰の詳細はこちら⇩

『武内宿禰と高良大社〜福岡県久留米市』

https://keipandkeip.blogspot.com/2021/08/blog-post_22.html


*紀淡海峡:大阪湾と紀伊水道をつなぐ、紀伊半島と淡路島の間にある海峡。


*荒魂(あらみたま):神の荒々しい側面。荒ぶる魂。


*廣田国:廣田神社がある兵庫県西宮市。


*活田長狭国:生田神社がある兵庫県神戸市中央区。

生田神社についてはこちら⇩

『生田神社〜兵庫県神戸市中央区』


*和魂:神の優しく平和的な側面。


*大津渟中倉之長峡:住吉大社がある大阪府大阪市住吉区。




【摂末社】


本殿向かって右側

[天照皇大御神社]

祭神:天照大御神













本殿向かって左側

[八幡社]

祭神:応神天皇



[松尾社]

祭神:大山咋神(おおやまくいのかみ)

   春日大神(かすがのおおかみ)













[月読社]

祭神:月読神(つくよみのかみ)













[楠宮稲荷社]

祭神:倉稲魂神(うかのみたまのかみ)





















[楠鷹稲荷社]

楠木の傍に楠宮稲荷社とは別に鎮座している。




[出雲社]

祭神:大國主神(おおくにぬしのかみ)

手前・出雲社 奥・蛭子社



















[蛭子社]

祭神:蛭子神(ひるこのかみ)














【赤えいと御神木の楠木】


楠宮稲荷社の奥に御神木の大きな楠木がある。

大きな楠木が日陰を作り、少し薄暗くて不思議な場所だ。

この楠木にまつわる伝承がある。

6世紀頃、台風の暴風雨で増水した刈藻川を繁殖期の赤えいの群が遡り、洪水で水浸しになった境内に入った。

これを見た人が、捕獲しようとしたが、御神木の楠木の付近で見失ってしまった。

以来、御神木の楠木は、赤えいが化身したと伝えられ、神の化身である赤えいの宿る処と崇敬されている。

赤えいを食べることをやめ、祈願すると願いが叶うと言われている。

赤えいが描かれた絵馬がたくさん掛けられている。




【おわりに】


長田神社に到着し、案内看板を眺めた。

『事代主神の御神徳を敬仰する氏子崇敬者に「和顔愛語」必要を呼びかけ、長田神社「にこにこ会」を起こしております』

と書かれているのを見てドキッとした。

初めて兵庫県を訪れた私は、思うように目的地に進まないことにイライラして、主人に当たっていた。

目的地までは迷いもせず、スムーズに辿り着いていたのだが、せっかちな私がいけないのだ。

そして、本殿で参拝していると、七五三の祈祷を受けていた家族に、神主さんが「いつもにこにこを心掛けて…」と言っているのが聞こえ、ビクッとした。

見えない存在に「にこにこしなさい」と言われているような気がして反省した。

御神木と赤えいの由来を見て、えいは蛋白で美味しいことを思い出し、えいの煮付けが食べたくなった。

昔は、赤えいは安価で貴重な蛋白源だったそうで、「赤えいを断つことは難しかっただろうな」と思った。