長田(ながた)神社
【所在地】
兵庫県神戸市長田区
【御祭神】
事代主神(ことしろぬしのかみ)
【事代主神の別名と意味】
[意味]
およそ天地の間、天上界と地上界、また宇宙間すべての物事をご覧になり、あらゆる物事を知り、守り、教え、諭し、導いてくださる神。
事代主神と関連するブログ記事⇩
『美保神社〜島根県松江市美保関町』
https://keipandkeip.blogspot.com/2021/07/blog-post_35.html
【由緒と歴史】
201年2月、神功皇后(じんぐうこうごう)の三韓征伐〔新羅遠征〕からの帰途、船が動かなくなった。
*務古水門(むこのすいもん)で神占いを行うと、事代主神が現れ、次のような神託があった。
『吾(あ)を御心(みこころ)長田の国に祀れ』
その後、豪族・山背根子(やましろのねこ)の娘・長媛(ながひめ)に事代主神を祀らせ、航海安全を祈った。
船は動き出し、海を渡ることができた。
*務古水門:兵庫県尼崎市の武庫川の河口。
【山背根子】
山背根子は、天孫一族の*天津彦根命(あまつひこね)の子孫。
京都南部〔山背・山城〕を拠点とする豪族。
*摂津国の山氏の祖。
2人の娘がおり、姉は葉山媛(はやまひめ)、妹は長媛(ながひめ)。
*天津彦根命に関する天孫一族、【天照大神と素戔嗚尊の誓約】についてはこちら⇩
『新田神社〜鹿児島市薩摩川内市』
https://keipandkeip.blogspot.com/2022/08/blog-post.html
*摂津国:現在の大阪府北中部と兵庫県南東部。
【神占いで現れた4人の神】
上記の神占いの内容を少し詳しく説明すると、務古水門での神占いで現れた神は、事代主神だけではない。
日本書紀には次のように記されている。
三韓征伐から帰途した神功皇后は、*筑紫の国で皇子〔*応神(おうじん)天皇〕を生んだ。
*麛坂皇子(かごさかのみこ)と忍熊皇子(おしくまのみこ)は、幼い皇子〔応神天皇〕が皇位に就くことを恐れ、謀反を企て、明石海峡付近で待ち構えていた。
それを知った神功皇后は、*喪船を作り、「生まれた子は亡くなった」と噂を流した。
船は大阪から大和に入る航路を避け、ひとまず*紀伊水門に上陸した。
神功皇后は、臣下の*武内宿禰(たけのうちのすくね)に皇子〔応神天皇〕を託した。
再び乗船した神功皇后は、*紀淡海峡へ迂回して難波へ進もうとしたが、船が海中でくるくると回り、動かなくなってしまった。
務古水門へ戻って神占いをすると、天照大神、稚日女尊(わかひるめのみこと)、事代主神、住吉三神が現れ、次のような神託があった。
神の教えの通りにしたところ、船は動き出し、平和に海を渡ることができた。
*筑紫の国:福岡県の東部を除いた地域。応神天皇が誕生した地は福岡県宇美町。
*応神天皇:第15代天皇。第14代・仲哀(ちゅうあい)天皇と神功皇后の子。
*麛坂・忍熊皇子:応神天皇の異母兄。仲哀天皇と大中姫(おおなかつひめ)の子。麛坂皇子は兄、忍熊皇子は弟。
*喪船:棺を乗せる船。
*紀伊水門:紀伊港。和歌山県の紀ノ川の河口。
*武内宿禰の詳細はこちら⇩
『武内宿禰と高良大社〜福岡県久留米市』
https://keipandkeip.blogspot.com/2021/08/blog-post_22.html
*紀淡海峡:大阪湾と紀伊水道をつなぐ、紀伊半島と淡路島の間にある海峡。
*荒魂(あらみたま):神の荒々しい側面。荒ぶる魂。
*廣田国:廣田神社がある兵庫県西宮市。
*活田長狭国:生田神社がある兵庫県神戸市中央区。
生田神社についてはこちら⇩
*和魂:神の優しく平和的な側面。
*大津渟中倉之長峡:住吉大社がある大阪府大阪市住吉区。
【摂末社】
本殿向かって右側
[天照皇大御神社]
祭神:天照大御神
本殿向かって左側
[八幡社]
祭神:応神天皇
[松尾社]
祭神:大山咋神(おおやまくいのかみ)
春日大神(かすがのおおかみ)
[月読社]
祭神:月読神(つくよみのかみ)
[楠宮稲荷社]
祭神:倉稲魂神(うかのみたまのかみ)
[楠鷹稲荷社]
楠木の傍に楠宮稲荷社とは別に鎮座している。
[出雲社]
祭神:大國主神(おおくにぬしのかみ)
手前・出雲社 奥・蛭子社 |
[蛭子社]
祭神:蛭子神(ひるこのかみ)
【赤えいと御神木の楠木】
楠宮稲荷社の奥に御神木の大きな楠木がある。
大きな楠木が日陰を作り、少し薄暗くて不思議な場所だ。
この楠木にまつわる伝承がある。
6世紀頃、台風の暴風雨で増水した刈藻川を繁殖期の赤えいの群が遡り、洪水で水浸しになった境内に入った。
これを見た人が、捕獲しようとしたが、御神木の楠木の付近で見失ってしまった。
以来、御神木の楠木は、赤えいが化身したと伝えられ、神の化身である赤えいの宿る処と崇敬されている。
赤えいを食べることをやめ、祈願すると願いが叶うと言われている。
赤えいが描かれた絵馬がたくさん掛けられている。
【おわりに】
長田神社に到着し、案内看板を眺めた。
と書かれているのを見てドキッとした。
初めて兵庫県を訪れた私は、思うように目的地に進まないことにイライラして、主人に当たっていた。
目的地までは迷いもせず、スムーズに辿り着いていたのだが、せっかちな私がいけないのだ。
そして、本殿で参拝していると、七五三の祈祷を受けていた家族に、神主さんが「いつもにこにこを心掛けて…」と言っているのが聞こえ、ビクッとした。
見えない存在に「にこにこしなさい」と言われているような気がして反省した。
御神木と赤えいの由来を見て、えいは蛋白で美味しいことを思い出し、えいの煮付けが食べたくなった。
昔は、赤えいは安価で貴重な蛋白源だったそうで、「赤えいを断つことは難しかっただろうな」と思った。
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