地球の記憶とエネルギーを感じる場所 霧島連山最高峰の韓国岳

2024/02/11

宇宙,日本の歴史,登山,宮崎,鹿児島,韓国岳,大浪池

 



韓国岳(からくにだけ)



【韓国岳】


韓国岳は、えびの高原東南にそびえる、*霧島連山の最高峰。

標高1700m。

直径900m、深さ300mの火口を持つ。

地図上では馬蹄形をなし、最高点は火口壁の南端にある。

韓国岳の登山は、えびの高原からスタートする。

山頂からの見晴らしは絶景で、新燃岳、高千穂峰、大浪池、桜島、*錦江湾などが一望できる。


*霧島連山:下で説明。


*錦江湾:鹿児島湾。鹿児島県では古くから錦江湾と呼称されている。



【韓国岳の由来】


韓国岳は、唐国岳と表記されることもある。

韓国岳という山名の由来には、次のような説がある。

  • 古事記にある「向韓國…」に由来する。

  • 日本書紀の「空国(からくに)」から「虚国」、「韓国」へと変化した。

  • 山頂付近は植生〔草木〕が無く空虚〔何もない不毛〕の地であるということで、虚國岳(からくにだけ)と呼んでいた。

  • 遠望がきき、韓の国まで見渡せる。

山頂から韓国まで見渡せるという説がある、実際には韓国は見えない。



【古事記に記された韓国の文字】


古事記・上巻・天孫降臨の段に、次のように記されている。


[原文]

於是詔之。此地者向韓國。眞來通笠紗之御前而。朝日之直刺國。夕日之日照國也。故此地甚吉地。詔而。於底津石根。宮柱布斗斯理。於高天原。氷椽多迦斯理而坐也。


是(ここ)に詔(の)りたまはく、「此地(ここ)は韓国(からく)に向かひ、笠紗(かささ)の御前(みさき)を真来通(まきとほり)て、朝日の直刺(たださ)す國、夕日の日照(ひで)る國なり。故に此地はいと吉き地ところ」と詔りたまいて、底つ石根に、宮柱太(みやはしらふと)しり、高天原に、氷椽(ひぎ)高しりて坐(ま)しましき」


[現代語訳]

瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)は言いました。
「この土地〔日本〕は、韓国〔中国・朝鮮半島〕に対峙していて、笠紗の岬に真っ直ぐに通り、朝日がしっかりと注ぐ国で、夕日が照らす国だ。ここはとてもよい土地だ」
そして底津石根〔地底深く〕に太い柱を立て、空にそびえるほどの壮大な宮殿を建てて住みました。


笠紗に上陸した瓊瓊杵尊の話はこちら↓

『野間神社~鹿児島県南さつま市』

https://keipandkeip.blogspot.com/2022/12/blog-post_29.html



【三国名勝図会では韓国岳は虚國嶽】


江戸時代に編纂された三国名勝図会(さんこくめいしょうずえ)には、虚國嶽(からくにたけ)と記録され、山名の由来を解説している。

三国名勝図会とは、薩摩藩が編纂して1843年に完成した、薩摩国、大隅国、日向国の一部を含む領内の地誌や名所を記した文書。

三国名勝図会〔巻之四十*踊〕には、次のように記されている。


虚國(からくに)は、空虚の地と言うように、まさしく日本書紀に、「膂肉之空國(そししのむなくに・そししのからくに)也」とあるのに困っている。
言い伝えに、「膂(そ)は背のことであり、背筋に肉がないことを、穀物の取れない瘦せた土地とたとえている」と言う。
*古事記伝に、「空國は昔よりムナクニと読む」とあるが、「胸副國(むなそふくに)に空の字を書かないで、別に胸の字を書かれていることを思うと、カラクニと読むべき」と記されている。
なので、このカラクニと言う名は、はるか昔から人々によって自然と語り継がれてきた山名で、虚國はつまり空國のことだから、カラクニと読むべきである。
それをいわゆる、「韓国に向かひ」の古事記から、瓊瓊杵尊が外国の韓国を望まれたことで、韓國見嶽〔韓国が見える山〕などという説があるのは、信用してはならない。


*踊(おどり):踊郷と呼ばれていた地域。現在は霧島市。


*古事記伝:江戸時代の国学者・本居宣長によって書かれた古事記の注釈書。



【日本書紀に記された膂宍胸副國】


三国名勝図会に記された「膂肉之空國」「胸副國」の部分は、日本書紀の巻第二・神代下・第九段・一書第二では「膂宍胸副國」と記されている。


〔巻第二・神代下・第九段・一書第二〕

故、天津彦火瓊瓊杵尊、降到於日向槵日高千穗之峯、而膂宍胸副國、自頓丘覓國行去、立於浮渚在平地、乃召國主事勝國勝長狹而訪之。對日「是有國也、取捨隨勅。」


故、天津彦火瓊瓊杵尊(あまつひこほににぎのみこと)、日向(ひむか)の槵日(くしひ)の高千穗(たかちほ)の峯(たけ)に降到(あまくだ)りまして、膂宍(そしし)の胸副國(むなそふくに)を、頓丘(ひたを)から國覓(くにま)ぎ行去(とほ)りて、浮渚在平地(うきじまりたひら)に立たして、乃ち國主(くにのぬし)事勝國勝長狹(ことかつくにかつながさ)を召して訪(と)ひたまふ。対(こた)へて日(まを)さく、「是(ここ)に國有り、取捨(ともかくも)勅(おおみこと)の隨(まにま)に」とまをす。


〔現代語訳〕

天津彦火瓊瓊杵尊は、日向の槵日の高千穂峰に降り立ち、不毛の地を丘づたいに国を求めて通り、浮島のある平らな土地に立った。
そして、国主の事勝國勝長狹を呼んで尋ねた。
すると、事勝國勝長狹は、「ここに国があります。得るも、捨てるも、あなた次第です。ご自由にどうぞ」と答えた。



【霧島山〔霧島連山〕】


鹿児島県と宮崎県の県境にそびえる火山群。

霧島山は、加久藤(かくとう)カルデラの南端に位置する、宮崎県と鹿児島県にまたがる20余りの火山の総称。

約34万年前の活動により形作られた霧島山は、それぞれの火山ごとに、形成年代や火山活動が異なるため、火山性の土壌やガスの状況も異なる。

そのため、それぞれの火山ごとに育成する植物に違いがある。

地球全体の気候変動・氷期を経験した標高の高い火山には、ブナやミズナラなどの落葉広葉樹が生き残っている。



【韓国岳爆裂火口】


韓国岳は、えびの高原から見ると、山頂が2つあるように見える。

これは、韓国岳ができた後、韓国岳山頂の火口の北西で火山の爆発が起こり、山腹に大きな火口が新たにできたため。

火口壁の北西部が爆発して崩壊し、火口湖はない。

山頂では積み重なったマグマのしぶきにより、山体が成長した様子を見ることができる。

山頂の火口は、火山の爆発で崩れ落ちた岩壁が荒々しい。


えびの高原第一駐車場から見る韓国岳

韓国岳 山頂 火口

火口 東側


【えびの高原】


えびの高原は、宮崎県えびの市の南に広がる高原。

標高1200m。

韓国岳や甑岳(こしきだけ)などの山々がすそ野を広げるトレッキングスポット。

不動池、六観音御池(ろっかんのんみいけ)、白紫池(びゃくしいけ)などの火口湖が点在。

えびの高原に点在するこの3つの火口湖は、綺麗な円形をしているのが特徴。

春から初夏にかけて、世界でえびの高原だけに自生するにノカイドウや霧島を代表するミヤマキリシマの花が見られる。



【六観音御池】


えびの高原に点在する3つの火口湖の中で最も大きな池。

周囲1.5㎞、直径400m、水深14m。

霧島の火口湖の中で最も美しい。

湖面の色はコバルトブルー。


右端の少し水が見える窪み:六観音御池
右斜め下:不動池
中央:白紫池



【不動池】


えびの高原に点在する3つの火口湖の中で最も小さな池。

直径210m、水深9m。 

光の乱反射によりコバルトブルーをしている。

えびの高原を走る県道1号線沿いにある。

不動池の北西300mほど離れた場所に硫黄山がある。

硫黄山が2018年に噴火したことで、県道1号線は通行止めになっている。

不動池の水質は、硫黄山の噴気が低下すると酸性度が下がり、コバルトブルーの色が薄くなる。


中央:不動池
中央の白い山:硫黄山
右端の山:甑岳
左側:白紫池



【白紫池】


水底までくっきり見える浅い池。

直径250m、水深1m。

水際ぎりぎりまで近づくことができる。

冬場は霧氷の美しい場所として有名。

かつては天然のアイススケート場として利用されていた。


韓国岳の五合目にある看板



【大浪池(おおなみのいけ)】


[所在地]

鹿児島県霧島市牧園町高千穂


日本一標高の高い場所にある火口湖。

周囲1.9㎞、直径630m、水深11.6m。

韓国岳の眼下、標高1241mの高地に広がる大浪池は、火口壁の高さは標高1412m。

約5万年前の大噴火で生まれたクレーターに水がたまってできた。

池の水質は強い酸性で、光の乱反射によりコバルトブルーをしている。

透明度が高いため、池底まで見通すことができる。

火口湖の水面と地下水面の高さが同じなので、水が干上がることはない。

標高の高い場所にも地下水があり、強い酸性の池なのにフナが生息している不思議な池。

美しい景観と高さを誇る神秘的な池。

不動池、六観音御池、白紫池、大浪池、韓国岳から見えるこの4つの池は、綺麗な円形をしている。


[大浪池伝説]

その昔、大浪池の麓の村に、年老いた庄屋の夫婦が暮らしていた。

何不自由なく暮らしていたが、子宝に恵まれなかった。

ある日、夫婦が山の神に祈ると、女の子を授かり、「お浪」と名付けた。

大切に育てられたお浪は、美しい娘へと成長し、結婚の申し込みをいくつも受けたが断り続けた。

その後、お浪は病気になってしまい、庄屋の夫婦は心配した。

ある晩、お浪は「山の奥へ行ってみたい」と言い出した。

夫婦は思いとどまるよう言い聞かせたが、お浪は聞き入れなかった。

そして、お浪は大浪池のほとりに立ち、池へ飛び込んでしまった。

なんとお浪は、夫婦の熱心な祈りに答えて娘となっていた、大浪池に棲む竜王の化身だった。

それから、竜王の棲む池を「お浪の池」と呼び、それがいつの間にか「大浪の池」となった。

これが大浪池の名称の由来となった。

三国名勝図会(さんこくめいしょうずえ)では、湖面が波立つ様子から由来したと記されている。


大浪池と錦江湾と桜島
左奥:桜島



【韓国岳登山ルート】


[登山ルート]

えびの高原ルート


[登山時間]

登り:120分 下り:90分


[参考コースタイム]

3時間30分


[標高差]

約540m 


[距離]

約5.3㎞


登山口は、えびの高原第一駐車場の道路の向かい側にある。

大きな標識があるので分かりやすい。

えびの高原第一駐車場のセンター内には、トイレや登山届ボックス、お土産屋さんなどがある。

駐車料金は車種ごとに変わり、乗用車は1日500円で利用できる。

えびの高原ルートは、登山道がよく整備されており、とても登りやすい。

所々、景色がよく見えるポイントがある。 

韓国岳山頂は絶景で、新燃岳と高千穂峰が連なっているのが綺麗に見える。

新燃岳の噴火の煙も見える。

新燃岳は、2011年1月26日に300年ぶりの激しい噴火を起こし、現在も火山活動は継続している。

韓国岳の隣の新燃岳と硫黄山は、火山活動が活発なため、周りの火山活動によって、入山規制されることもある。

登山をする際は、事前に火山の情報をチェックしておいた方がよい。

韓国岳山頂は、樹木が一切無いので、風が吹くと遮るものがない。

体が煽られるほどの強風が吹くこともあるので、火口に滑落しないように注意。


奥:高千穂峰
前:新燃岳


【おわりに】


大浪池伝説は、かぐや姫の話に似ている。

山頂から見る大浪池は美しく、伝説のように龍がいてもおかしくない壮大なスケール。

「こんな高い場所にこんな大きな池があるの!?」と思ってしまうくらい大きい。

山頂にいることを一瞬忘れさせてしまうほど大きな大浪池。

韓国岳山頂は台風並みの強風だった。

スマホで周りの景色を撮影していると、風で体が煽られそうになった。

風が弱まったら撮影して、風が強くなったら撮影を止めるを繰り返した。

山頂の火口の周りも歩きたかったのだが、風で体が煽られ、滑落しそうで怖かったので諦めた。

高千穂峰と新燃岳に太陽の陽が射して、雲海が広がっているようにも見えて綺麗だった。

登りやすく、山頂は絶景なので、韓国岳登山はとてもおすすめ。

ちなみに、高千穂峰よりも、韓国岳の方がとても登りやすかった。


高千穂峰登山についてはこちら↓

『天孫降臨の地~高千穂峰と天逆鉾』

https://keipandkeip.blogspot.com/2022/03/blog-post_25.html


韓国岳の北西に位置する白鳥山にある神社↓

『白鳥神社~宮崎県えびの市』

https://keipandkeip.blogspot.com/2024/01/blog-post.html